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東京高等裁判所 昭和47年(行ケ)48号 判決

一 前掲請求の原因のうち、本願発明につき、出願から審決の成立にいたるまでの特許庁における手続、発明の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に原告主張の取消事由があるか否かについて考察する。

(一) まず、本願発明および引用例の発明がともに自動車エンジンを利用する交流ダイナモの蓄電池充電回路における充電電流の制御に関するものであること、その基礎となる技術思想が、引用例の発明は(a)方式、本願発明(一)は(b)方式であり、同(二)は(被告の後記主張を留保して)少くとも(c)方式であること並びに右各発明における誘導リアクターがそれぞれ原告主張の分類のものに該当することは当事者間に争いがない。被告は、本願発明(二)においては、その発明の要旨が誘導リアクターの接続を直列接続に限定していないことを根拠に並列接続もあり得るとし、その場合の電流制御機能は(a)方式と解される旨を主張するが、弁論の全趣旨によれば、本願発明(一)における誘導リアクターの接続は直列接続であることが認められるところ、本願発明(一)と同(二)とを、その発明の要旨について、成立に争いのない甲第一号証中、本願明細書の特許請求の範囲の記載を参照して比較すれば、本願発明(二)における誘導リアクターの接続は同(一)におけるそれと同一であることが明瞭であるとともに、本願明細書及び図面には本願発明(二)における接続が並列接続を含むものと解すべき記載は存しないから、被告の右主張は根拠を欠くものである。

(二) 本願発明(一)について

本願発明(一)の要旨および前出甲第一号証、成立に争いのない乙第一号証の三、四によると、本願発明(一)の誘導リアクター(飽和インピーダから補助巻線を除いたもの)は、周波数とともにリアクタンスが増加する特性を有し、その鉄心材料が角型ヒステリシスループを有しないものであること、そして、本願発明(一)は、充電回路に接続した誘導リアクターの右特性と「エンジンの高速回転時には出力電圧が上昇するが、交流ダイナモにおいては同時にその周波数がこれと比例して高くなる」(本願明細書第二頁二~四行)性質とによつて、充電電流を一定に維持するという(b)方式の機能を営むものであることが認められる。これに対して、前出乙第一号証の三、四及び成立に争いのない甲第七号証、第九号証の一によると、引用例の誘導リアクター(磁気増幅器)は、「角型ヒステリシスループを持つ環状鉄心に二つのコイルを捲いたもの」(引用例の特許公報第一頁左欄二三、二四行)であり、一つのコイルのリアクタンスが、他のコイルの電流によつて、鉄心が飽和されるときは小になり、飽和点からずれるときは大になり、それに伴い流れる電流を大あるいは小にするものであること、そして、引用例の発明はこれにより、二次電池(蓄電池)充電回路において、蓄電池電圧が「未充電の場合大きな充電電流が流れ、充電完了時にはわずかな充電電流しか流れず、常に二次電池は最適な充電電流で充電される」(右公報第一頁右欄一~四行)という(a)方式の機能を意図したものであることが認められる。(なお、引用例の発明が(b)方式の制御機能を有しないことは被告も認めるところである。)

そうだとすれば、本願発明(一)と引用例の発明とは、その基礎となる技術思想を異にするばかりでなく、その構成要素たる誘導リアクターが特性、材料等の点においても異なることが明らかであるから、審決が本願発明(一)の構成を、引用例の構成からリアクターの第二のコイル、定電圧ダイオード、抵抗器等を除去した構成に一致すると認定したのは誤りといわなければならない。

(三) 本願発明(二)について

本願発明(二)の要旨および前出甲第一号証、乙第一号証の四によると、本願発明(二)の誘導リアクター(飽和インピーダ)は、直流制御捲線(補助巻線に相当する。)の直流電流の大小に応じてリアクタンスが変化するものであつて、そのためその鉄心材料が角型ヒステリシスループを有しないものであること、そして、本願発明(二)は、そのような誘導リアクターの直流制御捲線の電流を蓄電池の負荷電流とすることによつて、その大小に応じて充電電流を自動的に調整する(c)方式の機能を営むものであることが認められる。これに対して、引用例の誘導リアクターの構成および機能はさきに認定したとおりであり、また、前出甲第七号証によると、引用例の発明は、誘導リアクターの第二のコイルを定電圧ダイオードと並列に二次電池間に接続することによつて、(a)方式の機能を意図したものであることが認められる。(なお、引用例の発明が(c)方式の制御機能を有しないことは被告の認めるところである)。

そうだとすれば、本願発明(二)と引用例の発明とは、その基礎となる技術思想を異にするばかりでなく、その構成要素たる誘導リアクターが特性、材料等の点において異なることが明らかであるから、審決が本願発明(二)の構成を、引用例の発明と、技術思想においても制御器としてリアクターを用いる点でも一致すると認定したのは誤りといわざるをえない。

(四) 被告は、充電電流制御の(a)ないし(c)方式を当業者の技術常識であるとし、これを根拠に、本願発明(一)、(二)が(a)方式の示された引用例から容易に発明することができたものである旨を主張するが、少くとも本願出願前において、充電電流の制御に関して、(b)方式あるいは(c)方式によつて解決する技術が周知事項であつたことを認むべき証拠は全くないから、被告の主張は理由がない。

(五) 以上の次第で、審決は、本願発明(一)、(二)について、引用例の発明との技術思想及び構成における相違を看過し、これがため、その進歩性を否定して特許に値しないと判断したものであつて、違法である。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。

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